ＰＥＺ（ペッツ）の思い出

https://mainichi.jp/articles/20200221/ddl/k38/040/456000c

ペット化学物質汚染、学術書に　愛媛大・水川准教授、野見山准教授が執筆参加　／愛媛

体内からヒトより高く成分検出も
　飼いイヌやネコに忍び寄る化学物質の汚染。それはヒトの健康への影響を探ることにもつながる。こうした問題意識から、世界の研究者が先駆的な学術書を英文で発表した。「Ｐｅｔｓ　ａｓ　Ｓｅｎｔｉｎｅｌｓ，Ｆｏｒｅｃａｓｔｅｒｓ　ａｎｄ　Ｐｒｏｍｏｔｅｒｓ　ｏｆ　Ｈｕｍａｎ　Ｈｅａｌｔｈ」。アジアからは愛媛大の水川葉月准教授（３４）＝環境化学、野見山桂（けい）准教授（４０）＝環境共生学＝が参加している。
　「人間の健康の歩哨者、予測者、推奨者としてのペット」と訳され、スイスの出版社が書籍と電子書籍で出版した。ペットのイヌやネコの化学物質による汚染が過去１０年あまりの研究で次第に明らかになってきたため、スウェーデン、ベルギー、カナダ、米国、ブラジルなど８カ国の研究機関の学者が約２年半をかけ、１５章を執筆。室内の残留性有機汚染物質や神経毒性のある金属がペット、ひいてはヒトに及ぼす作用など環境面の問題に加え、イヌとヒトの肥満の関連性など、新たな健康の課題にも分け入って論じた。編集は愛大での研究経験があるアナ・ソーサさんらポルトガルの研究者２人が担当した。

　「ペットのイヌやネコによる臭素化合物の生体内変化」の章で、水川さんらは２０１２年以降に採取した飼いネコの血清からヒトの数倍～数十倍の残留性有機汚染物質「ポリ臭素化ジフェニルエーテル」（ＰＢＤＥｓ）を検出したことを明らかにした。難燃剤として家具・家電などに広く使われ、体内にとどまるとホルモン分泌に影響を及ぼす物質だ。

　水川さんらはペットフードも分析した。特にカツオ、マグロなどを使った製品には海洋起源の天然化合物「メトキシＰＢＤＥｓ」が高濃度で含まれ、ネコの体内に取り込まれると、薬物代謝酵素の働きで「水酸化ＰＢＤＥｓ」に変化することも分かった。ヒトなどの肝臓にある解毒機能「グルクロン酸抱合」が、ネコには遺伝的に欠けているためＰＢＤＥｓが高濃度で蓄積したと考えられる。この機能があるイヌの血清からはさほど検出されていない。

　また、ＰＢＤＥｓの濃度が高い血清ほど甲状腺ホルモンが少ない傾向があり、甲状腺機能がかく乱される可能性も示している。研究ではイヌ、ネコの脳、肝臓、血液など体内組織ごとの汚染物質の分布を初めて計測。今後は脳神経系への影響を含め、詳細な分析を行う。

　「家族の一員であるペットはヒトより先に化学物質に汚染されることが分かってきた。ヒトの健康への影響を評価する指標にもなり得る」と野見山さん。水川さんも「ペット動物の汚染は地域特性にも大きく左右される。世界の研究者はライバルでもあるが、横のつながりを大切にして状況を把握したい」と話す。さらなるリスク評価へ向け、仲間と共同研究を進める考えだ。