【自粛不況】「いっそ営業禁止と言ってほしい」人影途絶えた歌舞伎町　風俗業界も深刻

新型コロナウイルスの影響で、普段はサラリーマンや学生でにぎわう歓楽街の客足は一気に途絶えた。バー、キャバクラ、飲食店――。感染拡大のきっかけになるとして、最も出入りの自粛を求められている店で働く人たちは何を思うのか。東京・新宿を歩いた。

　雨にぬれた路面をネオンが照らす。1日夜。駅前に設置された大型ビジョンに、外出自粛を呼びかける小池百合子都知事の姿が映し出された。いつもはサラリーマンらでごった返す大通りも、今は閑散として人もまばら。「命を守る行動をとりましょう」。知事の声が響く。

　歌舞伎町の通りを歩くと、キャバクラなどに客を誘導する無料紹介所の一部はシャッターを下ろしていた。客引きの数も減っているようだ。

　無料紹介所で働く男性（35）は諦めたような表情で話し始めた。「一日立っても客はゼロ。仕事にならないよ」。給料は案内した客の数に応じた歩合制。客が来なければただ働きだ。「もう閉めてしまいたいです」

　300店近い飲食店が集まるゴールデン街。普段は外国人客でにぎわう盛り場も人出が少なく、休業を知らせる紙が張られた店もあった。

　「この状況で店を開けるなんて非国民みたいですよね」。バーの女性従業員（31）が言った。「自粛ではなく、いっそのこと営業禁止と言ってほしい。でも、そう言ったら補償する必要が出てくる。行政から言いにくいのも分かる」。冷めた目を人通りのない通りに向けた。

　キャバクラで働く女性（23）によると、コロナが広まってから売り上げが減ったが、先月25日に外出自粛要請が出た後はさらに客足が遠のいたという。

　店ではマスクはつけられない。客が来店すれば、肌が触れる距離で会話するしかない。ウイルスへの心配を笑顔で隠すが、酒が進めばつばを飛ばしてしゃべる人もいる。さりげなくハンカチで拭うのが精いっぱいの抵抗だ。「お客さんはもちろんありがたいけれど、心からは喜べないです」

　風俗業界に身を置く女性（29）の状況も深刻だ。「コロナが広がる前に比べ、仕事は3分の1以下になってしまった」と嘆く。補償が欲しいとは思うが、ためらう気持ちもある。「仕事柄、人に胸を張って『助けて』とは言いにくいです」とうつむいた。

　風俗業界の女性からの生活・法律相談に応じる「風テラス」で活動する安井飛鳥弁護士は、コロナ流行に伴い、女性から「借金が返済できない」「生活が立ちゆかない」といった相談が増えたと明かす。小遣いを渡すと男性に誘われ、性被害にあうケースもあった。

　安井弁護士は「声を上げにくい立場の人がこぼれ落ちないよう、仕事の損失に対する補償ではなく、ベーシックインカムのような施策はどうか」と提案している。【斎藤文太郎】

　◇感染広がる「夜の街」

　「夜の街」での感染が広がっている。厚生労働省によると、3月末までの約2週間に東京都内で確認された感染源がはっきりしない感染者のうち、約3割にあたる38人がキャバクラといった接客などを伴う飲食業との関連を疑われている。そのため、都は夜間から早朝に営業する接待飲食店への出入りの自粛を都民に要請している。

　大規模な繁華街がある新宿区も、こういった接客業を営む店舗の利用を自粛するよう呼びかけるコメントをホームページで公表した。都の発表では、1日現在の新宿区在住の感染者は30人。新宿保健所が3月末時点で把握していた感染者の約4分の1が、夜間営業に関わる業務に従事しており、「若い人の感染は増加傾向にある」（同保健所の担当者）とみている。

　特に繁華街で声をかける接客業のスカウトらが感染した場合、本人や勤務先から情報が得にくく、濃厚接触者の調査が難しいという。

　都は、自粛呼びかけにより打撃を受ける飲食店などの中小事業者について、国に対策を求めると同時に、都独自でも支援を講じるとしているが、具体策はまだ見えていない

4/2(木) 21:04配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200402-00000072-mai-soci

イクか…