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依存症支援、対面ＮＧで居場所作りに苦心　宮城県

アルコールや薬物などの依存症に苦しむ人たちを支援する自助グループが、居場所作りに苦心している。新型コロナウイルスの影響で、当事者たちの直接の対話が制限されてしまっているからだ。オンラインでの対応に力を入れるところも出てきた。

　4月下旬の朝、仙台市青葉区にある民間のリハビリ施設「仙台ダルク」の一室に入寮者5人が集まってきた。「今日のテーマは『なぜ自分はここにいるか』です」。依存経験を語り合うミーティングだ。

　新型コロナの蔓延で2月下旬から、間隔を空けて座れるよう参加者を半分に絞った。窓を開け、毎朝の検温、ドアノブの消毒も欠かさない。

　向かい合っての対話が、依存症から抜け出す助けになるのだという。「声の抑揚や貧乏揺すりなどを含めて、感情を受け取る」と言う司会の男性（33）は、「同じ空間にいるから深い話ができる」と強調した。仲間に共感できれば自らの過去にも向き合える。この男性自身、ゲイであることを打ち明けてから、薬物依存から抜け出せたという。

　事務室の棚の上には、いくつかの「遺影」がある。自ら命を絶った入寮者たちだ。飯室勉館長は「いま外に出られないことが、入寮者のストレスになっている。命を救うため、これからも活動を続ける」。

　ただ、こうした対面での会話を取りやめているところは少なくない。

　大崎市にある県の精神保健福祉センターでは4月中旬から、当事者たちが集まるミーティングを中止した。月に2回ほど3～8人が参加していたが、感染リスクは避けられないと判断した。今は来所や電話による個別相談のみ。県内の感染状況を踏まえて再開を検討するという。仙台市の精神保健福祉総合センターも同様で、ミーティングを取りやめつつも、参加者たちとは電話などでやりとりを続けているという。

　自助グループはオンラインでの支援に力を入れている。

　長年、依存症の予防・回復支援に取り組んでいるNPO法人「アスク」（東京）は4月20日から、ビデオ会議システム「Zoom」などを利用し始めた。宮城県の依存症専門医療機関である東北会病院（仙台市）がウェブサイトで紹介している自助グループの一つ。多くの団体が対面での活動を自粛したことで、全国の医療機関から「患者を紹介する先がない」との相談が相次いだという。

　今成知美代表（63）は、外出自粛によって依存症が広がらないかと懸念する。仕事などでかろうじて行動を保っていた人でも、刺激を欲するようになるからだ。「少しでもまずいと思ったらまずはオンラインに来てほしい」と訴える。

　新型コロナによる不安の高まりもうかがえる。

　依存症の当事者やその家族たちがLINEで話し合う「三森自助グループの森」。参加者から「関係の悪い家族と向き合わざるを得ない」「1人になって考え込んでしまう時間が増えた」「新型コロナで不満や怒りに満ちているSNSを見てつらい気持ちになる」といった声が寄せられ、2月末からミーティングを増やした。

　主宰する依存症予防教育アドバイザーの三森みささん（27）自身、カフェイン錠剤などへの欲求が高まっているのを感じるという。「不安定になったときには、まずははき出せる場所が大事だ」と気軽な相談を呼びかけている。